はちみつの商品名やパッケージに「純粋」と表記されているものを見かけます。
消費者の心理としては「せっかく健康のためにはちみつを食べるんだから、純粋じゃないとね」って感じで購入されるのでしょう。

その純粋はちみつ、スーパーの売価は100gあたり100円~200円。
養蜂家からすると、本物のはちみつだとすれば「え!そんなに安いの?」と驚く値段。

ではスーパーなどで販売されている「純粋はちみつ」とはどんなものなのか、見てみましょう。

全国はちみつ公正取引協議会という団体

「純粋はちみつ」という表現を定義しているのは「一般社団法人全国はちみつ公正取引協議会」という団体。
定款を見ると「消費者に正しい選択をしてもらうこと」で「国民の食生活向上とはちみつ業界の発展に寄与する」ことを目的としています。

この団体が熱心に活動してくれれば一般消費者にはちみつの正しい知識が普及して、正しい判断をしてもらえるということなので、ぜひ積極的に情報発信して欲しいのです。
この団体を検索してみると、このサイトに行きつきます。

一般社団法人全国はちみつ公正取引協議会

「ん?なんだこれ」と思った方、実はこのサイトはこの団体のものでは無く、「公益法人協会」という団体のWebサイトの1ページ。
そういうんじゃなくて、自前のWebサイトでぜひ積極的な情報発信をしてほしいですね。

リニューアルされて、自前のWebサイトになったようです^^
ただ、積極的に情報発信をしてほしいっていうのはまだまだな印象ですが・・・。

「純粋」という表示に関する規定

消費者に正しい選択をしてもらうために、この団体が作った規約がこちらです。
今回の主題であるところの「純粋」という表記に関する規定は第4条(1)に書いてあります。
公正競争規約及び施行規則

はちみつに「純粋」、「天然」、「生」、「完熟」、「ピュア」、「ナチュラル」、「Pure」、「Natural」その他これらと類似の意味内容を表す文言を表示しようとする場合には「純粋」又は「Pure」という文言に統一しなければならない。

「ん?何を規定しているんだ?」と思いませんか?

「純粋と表記する場合の要件」を規定しているのではないんです。
「天然」「生」「完熟」という文言を使用できなくして、「純粋」を使えという規約になっています。

裏を返せば、「天然」「生」「完熟」じゃないはちみつを生産する事業者に有利にするためだと思いませんか?

養蜂家は「天然」「生」「完熟」とは、ミツバチが巣箱の中で完成させてくれる、加熱する必要がない本物のはちみつをイメージします。

「天然」「生」「完熟」じゃない「はちみつ」とは、完成を待ちきれずに水っぽいまま集めた蜜を人工的に加熱して完成させた偽はちみつをイメージします。

これらをひっくるめて「純粋」と表現しなさい、というのがこの規約の意図しているところです。

「消費者に正しい選択をしてもらうこと」で「国民の食生活向上とはちみつ業界の発展に寄与する」ことを目的とした規約のはずですが、どう考えれば良いでしょうか。この規約は間違いないですよね?

加熱・ブレンドは「純粋」の範囲内

前述の「純粋」に関する規約を見る限り「はちみつ」であれば「純粋」とつけていいことがわかります。
では、この団体は「はちみつ」をどのようなものと定義しているのでしょうか。

規約の中では「はちみつ」の定義を「別表の通り」としていますが、別表が見当たりません(やれやれ)ので、大手はちみつメーカーさんのWebサイトに掲載されている「別表」を見てみましょう。
以下ページの中ほどにあります。

ハチミツについて 歴史|定義|色と味|砂糖との違い

全国はちみつ公正取引協議会のサイトがリニューアルされて、「はちみつの組成基準」が掲載されていました。

はちみつの検査実施要領内Ⅰ

これを見る限り、加熱やブレンドに関する規定はありません。
これらを踏まえて「純粋はちみつ」がどういうものを指すのか、2つのケースで想像してみました。

「純粋はちみつ」の実態とは?

【ケース1】の純粋はちみつ

西洋ミツバチを大切に育てている養蜂家Aさん。
何とか無事に越冬できたミツバチたちが、春になって元気に花の蜜を集めてくれます。

花蜜は水分が70%以上と多いため、放っておくと巣の中で発酵してしまいます。
ミツバチは一生懸命羽で水分を飛ばし、水分量20%以下になったところで蜜蓋をしてやっと完成。

昼になるとまた水分の多い花蜜を集めてきてしまうため、養蜂家は朝方完成した蜜をある程度抜き出して搾ります。
残りはミツバチたちが越冬するまでの食糧として確保しておきます。

こうしてミツバチとの共同作業で生産された、非加熱で栄養成分たっぷりの「純粋はちみつ」。

【ケース2】の多国籍純粋はちみつ

中国やアルゼンチンなどで収穫される「はちみつ」を、ドラム缶単位でコンテナに積み込み、輸入します。
生産性重視のため、水分の多い状態の蜜を抜き出し、発酵しないように人工的に加熱してドラム缶に充てんします。

船便の多くは赤道を通過するため、コンテナ内は60℃以上に熱せられ、長時間揺られてきます。
国内の工場に運ばれてきたドラム缶の「はちみつ」を、味を調えるためブレンドしてパッケージに充填していきますが、温度が下がると「はちみつ」の粘度が高まるため、再度加熱して効率を高めます。

数々の加熱工程を経て、酵素やビタミンが破壊されてしまう、多国籍の「純粋はちみつ」。

上記2つのケースについて

あくまでフィクションですが、これって同じ「純粋はちみつ」というような表現にしなければいけないのでしょうか。
誰のために「純粋」に統一しようとしてるのか、とても不安に感じてしまいます。

「消費者に正しい選択をしてもらうこと」で「国民の食生活向上とはちみつ業界の発展に寄与する」ことを目的とした規約のはずですが、本当に間違いないのでしょうか。

過去の公正規約違反

Web上にはこの件についてたくさん情報を確認することができます。
2007年5月14日の読売新聞の記事について、残念ながら原文は見つかりませんが、要点は下記の通り。

異性化液糖などを最大50%使用したものを「純粋はちみつ」として販売
「加糖はちみつ」「精製はちみつ」として飯台された商品もはちみつ含有の割合が規定に満たなかった。
上記規約違反は「全国はちみつ公正取引協議会」役員の企業だった
他の企業も含め、7年間の定期検査で120点が規約違反の疑いがあったが、事情調査も公正取引委員会にも報告せず

これが2007年当時のこの団体の実態です。

その後どのように改善されているのか、協議会自体は何も情報発信していないように見えますが、相変わらず多くの事業者が年会費を支払って運営されているようですね。

まとめ

アイネクシオでは製品名に「生はちみつ」とつけています。
協議会に所属していませんから、この規約に縛られる必要はないため、全く問題ありません。

この意味のなさそうな規約に縛られるのに、この団体に加盟する必要性が感じられませんでした。加盟することできっと大きなメリットがあるのだろうと考えてしまいます・・・まぁこの状態では加盟することはありませんが。

2019年01月24日の時点、あまり意味のない団体と考えてしまっています。