外国の方が日本のはちみつを食べると、「あっさりし過ぎている」と感じることが多いようです。
それは、日本人の味覚が薄味に慣れていることから、クセの強いはちみつは敬遠される傾向があるからではないでしょうか。
そして日本人の味覚に合わせるためなのか、実は日本の「はちみつ類」は、外国の方が聞いたら驚くようなものになっているのです。
国際規格ってどんな風に決められるのか
国際規格は、「CODEX(コーデックス)規格」とも呼ばれます。
これはコーデックス委員会によって決められるものですが、厚生労働省によりますと、コーデックス委員会とは下記になります。
コーデックス委員会(Codex Alimentarius Commission (CAC))は、国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations (FAO))と世界保健機関(World Health Organization (WHO))が1963年に設立した、食品の国際基準(コーデックス基準)を作る政府間組織です。その目的は、消費者の健康を保護するとともに、食品の公正な貿易を促進することです。180カ国以上が加盟しています。
このように、国連やWHOも関与する、まさに国際的な機関です。
ここで、提案国を中心に規格案が作成され、議論や修正を重ねて合意に至ったものが国際規格となります。
国内でも国際規格を順守することは重要なことです。
なぜなら、規格を満たさないものは諸外国から受け入れてもらえないからです。
多くの食品では、国際規格を基準に国内の食品規格を作成するのですが、はちみつはどうなんでしょうか。
国際規格のはちみつ
国際規格では、はちみつとは下記のように定義されています。
植物の花蜜、植物の生組織上からの分泌物、または植物の生組織上で植物の汁液を吸う昆虫が排出する物質からミツバチがつくりだす天然の甘味物質であって、ミツバチが集め、ミツバチが持つ特殊な物質による化合で変化させ、貯蔵し、脱水し、巣の中で熟成のためにおいておかれたものである。
CODEX ALIMENTARIUS
そして、不可欠な要素として下記を挙げています。
- 食品成分(食品添加物を含む)を一切加えてははならない
- はちみつ以外のものを加えてはならない
- 生産や充填の過程で、味・香りに悪影響が無いようにし、異物が混入しないように気をつけなければならない
- 発酵が始まっていてはならない
- 混入した異物を取り除く場合を除き、花粉やはちみつ固有の成分を取り除いてはならない
本来はちみつは一切混ぜ物の必要がありませんから、当然の要素だと思います。
日本の「はちみつ類」の実態
では、国内の規格はどのようになっているでしょうか。
国内の規格を定めているのは「一般社団法人全国はちみつ公正取引協議会」という団体が定めた「はちみつ類の表示に関する公正競争規約」というものです。
その中で、はちみつの「定義」を定めた箇所を見てみましょう。
この規約において「はちみつ類」とは、はちみつ、精製はちみつ、加糖はちみつ、巣はちみつ及び巣はちみつ入りはちみつをいう。
- この規約において「はちみつ」とは、みつばちが植物の花みつを採集し、巣房に貯え熟成した天然の甘味物質であって、別表に定める性状を有し、別表に定める組成基準に適合したものをいう。
- この規約において「精製はちみつ」とは、はちみつから臭い、色等を取り除いたものであって、別表に定める組成基準に適合したものをいう。
- この規約において「加糖はちみつ」とは、はちみつに異性化液糖その他の糖類を加えたものであって、はちみつの含有量が重量百分比で60パーセント以上のものをいう。
- この規約において「巣はちみつ」とは、新しく作られて幼虫のいない巣房にみつばちによって貯えられたはちみつで、巣全体又は一部を封入したまま販売されるものをいう。
- この規約において「巣はちみつ入りはちみつ」とは、はちみつに巣はちみつを加えたものをいう。
- (1)の「はちみつ」には、精製はちみつ又はローヤルゼリー、花粉、香料、果汁若しくはビタミンを加えたものを含むものとする。
「はちみつ」の定義は、国際規格と大きく違いません。
別表の定めるところで違いを見ると、水分量が、国際規格20%以下に対し、日本の規格は2%以下と若干ゆるくなっているくらいの違いです。
問題なのは、加工されたものを含めて「はちみつ類」と分類し、消費者に対して区別が分かりづらくなっているという点です。
「精製はちみつ」は、字面は純度の高いはちみつのように見えますが、無色透明で香りの無いもの。
香りや色と同時に栄養成分も取り除かれてしまった、ただの甘味料です。
「加糖はちみつ」とは、はちみつに合成された糖類を添加したもの。
天然のはちみつに比べて安価に生産できるため、はちみつに混ぜてかさ増ししているというイメージです。
ここで添加される「異性化糖」が人体に悪影響を及ぼすという話について、真偽のほどは定かではありませんが、いずれにしても天然の栄養豊富なはちみつとは程遠いものとなります。
こういったものを含めて「はちみつ類」とすることで、消費者には非常に分かりにくくなっていると思いませんか?
そして気をつけなくてはいけないのは、こういった「はちみつ類」全般に、「公正取引」のマークをつけられるということです。
上の規約を守ってさえいれば、精製はちみつにも加糖はちみつにもこのマークをつけることができます。
これは、「一般社団法人全国はちみつ公正取引協議会」が会員企業に対し、1枚いくらで販売しているものなんです。
このマーク、はちみつであることを証明するものではありませんので、ぜひ知っておいてください。
まとめ
売り場にはいろんな「はちみつ類」が販売されています。
あなたが手に取ったものは、「はちみつ」なのか、「はちみつ類に含まれる、はちみつでは無いもの」なのか、よく確かめるようにしましょう。
そしてもう一つ、「輸入はちみつの方が本物なんだ」という考えも間違っています。
原料として輸入されるはちみつは、船に積まれる前に加熱されているため、本来の香りや栄養成分は壊れてしまった状態のもの。
一番安心なのは、対面できる養蜂家から手に入れることですね。