ミツバチは、1匹の女王バチを中心として、与えられた役割をそれぞれがこなすという、とても規律正しい社会を形成しています。
それぞれがどんな生涯を送るのか、ご紹介しましょう。

卵~サナギ期

ミツバチの巣の中には「女王バチ」「働きバチ(雌バチ)」「雄バチ」がいます。
卵の段階では、雄と雌の区別しかありません。

では、女王バチと働きバチはどこで区別がつけられるのでしょうか。
それは「生まれる場所」と「栄養」です。
巣の中に新しい女王バチが必要とされると、「王台」という巣房が作られます。
普通の巣房よりも大きい王台に産み付けられる卵は、エサとしてローヤルゼリーがふんだんに与えられます。

王台
王台
王台の中のローヤルゼリー
王台の中のローヤルゼリー

一方働きバチとなる雌バチには、孵化後3日間程ローヤルゼリーを与えられた後は、花粉とはちみつを与えられて育ちます。
この違いが、女王バチと働きバチの違いになるのです。

働きバチ(雌バチ)の生涯

一般的にイメージされるミツバチとは、おそらく雌の働きバチのことでしょう。
働きバチは全て雌で、成虫になってからの期間によってその役割が変化していきます。

掃除係(1日~3日)

生まれたばかりの働きバチは、1~2時間かけて、脚や羽根を使っておなかをこすって汚れを落とし、身繕いをします。
幼虫が出た後の部屋に散乱しているサナギが脱ぎ捨てた皮や巣房の蓋の掃除をしたり、貯蜜房や花粉をなめてきれいにします。

育児係(3日~15日)

咽頭線が発達してローヤルゼリーが分泌できるようになり、女王バチや幼虫の給餌が始まります。
卵の点検から幼虫の世話まで忙しく働きます。

造巣係(10日~20日)

咽頭線が衰えローヤルゼリーの分泌は少なくなります。
代わって巣作りに必要な蜜ろうがろう線から分泌されます。
この蜜ろうを使ってあの正確な六角形の巣を作ります。

換気係・守衛係(20日)

巣箱内の温度調整をしているのが換気係です。
巣箱内の温度があがると巣門前で羽を動かし、巣内の空気を外に送り出すことで調整します。

換気係
換気係

また、守衛係は巣門前に待機し、外敵から巣を守ります。
ミツバチは外敵を針で刺すことで攻撃しますが、一度刺してしまうと針と一緒に内臓が引き抜かれてしまうため、死んでしまいます。

外勤係(20日以降)

蜜や花粉を集めます。
1分間に訪れる花の数は15個。
1ヶ月の飛行距離が北海道から鹿児島までを2往復した距離1万km。
その間に集める蜜はティースプーン1杯程度です。

外勤係
外勤係

プロポリス係(20日以降)

蜜を採らなくなったミツバチはプロポリスを作る材料を集めます。
プロポリスの材料は、樹液などです。

女王バチの生涯

王台に生まれた卵はローヤルゼリーをふんだんに与えられ、やがて女王バチとなります。
女王バチが必要な時期には王台がいくつか作られます。
巣の中に女王バチは1匹で十分なので、最初に生まれた女王バチは他の王台を壊し、別の女王バチが生まれないようにします。

成虫になってから7日程度で性的に成熟する女王バチは、雄バチ数匹を引き連れて交尾の旅へ出かけます。
飛びながら空中で数匹の雄バチと交尾を繰り返し、受精のうが満タンになるまで続きます。
この交尾旅行には、別の巣の雄バチも参加するのですが、どのようにその時期や場所が伝達されるかは解明されていません。

交尾を終えた女王バチは巣に戻り、2年~4年間卵を産み続けます。
やがて新しい女王バチの誕生を迎えるとき、働きバチの半分程度を引き連れて、自ら巣の外へ飛び出し、新女王に巣を譲ります。

女王バチ
女王バチ

雄バチの生涯

雄バチの役目は唯一、女王バチとの交尾です。
交尾の旅へ出かける女王バチの後を追いかけ、空中で女王バチに馬乗りになり、交尾器を女王バチに差し込みます。
交尾が終了すると、交尾器を女王バチの体内に残し、死んでしまいます。

交尾に失敗した、またはタイミング的に交尾の必要がない雄バチは、ただ食糧を食いつぶすだけの邪魔者として、巣の中でも肩身の狭い思いをしているかもしれません。

やがて秋になり、越冬のための食糧を有効に使うため、雄バチは巣の外へ追いやられます。
これも群が次の春を元気に迎えるための修正です。

雄バチ
雄バチ

まとめ

見事に役割分担されているミツバチの社会。
どうしても人間に置き換えて見てしまうので、巣を追いやられる雄バチの姿などには同情してしまいます。
世のお父さん方、家を追い出されないようにがんばりましょう!